ドレスコーズ「ジャズ」全曲紹介 ~人類が最期に残す音楽とは?~

アルバム全曲紹介

こんばんは、まんじろう(@manjirooblog)です。

今日は、ドレスコーズ6枚目のアルバム「ジャズ」をご紹介しようと思います。

アルバムリリース時にドレスコーズ公式Twitter上で公開されていた、志磨遼平さんご本人のインタビューの内容も踏まえて、全曲ご紹介してみようと思います。

それでは、どうぞ!

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アルバムタイトル「ジャズ」の由来

はじめに、アルバムタイトルの由来について、志磨さんは以下のように語られていました。

アフリカのリズムとヨーロッパの音階や楽器を融合させて生まれた、世界ではじめてのミクスチャー音楽でもある“ジャズ”は、20世紀の始まりとともに、当時普及しはじめたラジオに乗って世界中に広まり、世界中で同時に聴かれた“世界初のポピュラーミュージック”でありつつも、当時の人々からは“騒がしくて中身が無い音楽”とも言われた。

そして、時代の変化に振り回され続けてきて、騒々しくて慌ただしくも、どこか中身が無いように見えてしまう僕ら、21世紀に生きる人類の”浮き沈みの象徴“という意味での「ジャズ

とのことです。ですので、本アルバムに収録されている楽曲がジャズであるというわけではありません。“誰もがわかりやすいポピュラリティを持ち合わせながら、浮き沈みの激しい現代人を歌った楽曲を集めたアルバム作品”と言えるかと思います。

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ドレスコーズ「ジャズ」全曲紹介

「でっどえんど」

でっどえんど=Dead End=行き止まり。厳かなイントロから始まる、3分間の歌。

今を生きる僕たちは、袋小路に迷い込んでしまったのではないか?

これまで積み重ねてきた僕たちの歴史は、ここで行き止まりなのではないか?

という今作のテーマを提示する、オープニングを飾る1曲。

「ニューエラ」

ニューエラ=New Era=新しい時代。帽子の方ではないそうです。

今を生きている誰しもがなんとなく肌で感じている、何かが大きく変わりそうな予感、時代が大きく変動する転換期=パラダイムシフト=新時代を高らかに宣言し、それを受け入れる歌。

ラストの大サビでの開放感は聴いていて、鳥肌が立ってしまいます。 

最期の「星になれるのよ 死んだらね」の幸福感。

終始心地良く鳴り響いているギターリフや、エレキギターを弾いているのはTHE NOVEMBERSのケンゴマツモトさんとのことです。

「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」

タイトルの「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」はヘブライ語で「神よ、神よ、なぜ私を見捨てたもうや」の意味。聖書の中で、キリストさんが死の間際に言い放った言葉といわれています。

今作の中では、比較的アップテンポな楽曲のため、最近での音楽フェスやTV出演時にも演奏されています。

「なぜ見捨てたのか?」と尋ねながらも、「信じきるくせだけ 抜けなかったな 救えないわ」と開き直っているところが、とても志磨さんらしくて最高ですね。

「チルってる」

“chill(チル)”には”寒気”や”肌寒い”という意味がありますが、アメリカではリラックスした状態のことを「chill out」と呼ぶ表現があり、そこから派生して日本でも「チルする」「チルってる」などの表現が生まれたそうです。

その表現を志磨さんは「高度経済成長期が明らかに終わり、その余韻の上でのんびりくつろいでいるように居座っている現代人って、もしかしてこれはチルッてるのではないか?」と考え、その発想から生まれた楽曲。

ご本人曰く「”チルってる”って言いたいだけの曲」だそうです(笑)

「カーゴカルト」

“カーゴカルト”とは、直訳で”積荷信仰”のこと。発展途上国から見れば、先進国の技術が詰まった物質は”未知のモノ”である様に見えるため、何かのきっかけで発展途上国の手に”未知のモノ”が渡ることがあれば、それは神様や先祖代々からの恵みと捉えて、その”未知のモノ”を祀り崇めるという信仰。現代人が大好きな様々なブランドも、”モノを崇拝する”一種のカーゴカルト。

「皆 老いることにおびえながら 老いる」でゾッとさせられ、「選べない ルートを ルートを 下ってく」と「ほら 今もルート音 ルート音 下ってく」が最高。

「銃・病原菌・鉄」

約2分間のインストゥルメンタル楽曲。本アルバムの前半と後半をつなぐ架け橋。

ヨーロッパの西洋文化がなぜこんなにも影響力を持ち、世界中に広まっていったのか。

それは、「銃と病原菌と鉄の影響力がとても大きかったから」と考察する有名な本があり、この曲のタイトルは、その本のタイトルから拝借したそうです。

「もろびとほろびて」

クリスマス賛歌「もろびとこぞりて」のオマージュ的な楽曲。

もろびと=諸人=多くの人またはみんな。もろびとほろびて=みんな滅びて

志磨さん曰く「このアルバムのテーマを1番端的に歌っているかもしれない。ラップという形態をとっているので文字数が多く、説明的なリリックがお気に入り。」とのこと。

「500年続いた人間至上主義を いっかいおひらきにしよう」「核兵器じゃなくて 天変地異じゃなくて 倫理観と道徳観がほろびる理由なんてさ」はまさに今作「ジャズ」の根幹となる部分ですよね。

また、個人的に「セブンイレブンがあったらいい」「誰とでもやる ぼくバンドビッチ」が志磨さんしか書けない、志磨さんならではの歌詞でたまらなく好きです。

「わらの犬」

曲のタイトルは、「昔の中国では藁で作った犬を神様にお供えし、祭りの期間中は崇め奉るが、祭りが終わるとすぐに捨ててしまう風習から、人間が行う行動など天地からすれば中身の無いちっぽけなものに過ぎない」という故事から。

ただ ただ 生きてゆく だれかのしるしを辿るように」と

いつか そのしるしを見つけた学者が首をかしげるだろう」の組み合わせが切ないですね…。

「プロメテウスのばか」

ギリシャ神話にて、全能な神ゼウスを騙して、人間に”火”を与えたことにより、ゼウスから罰を受けた神様がプロメテウス。

「そんな逸話など、人類である僕らはしったこっちゃない」という思いあがりの歌。

「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」、「わらの犬」とこの曲では、東京スカパラダイスオーケストラより、ギターの加藤隆志さん、ドラムの茂木欣一さんが参加されています。

「Bon Voyage」

東海道中膝栗毛をテーマにしたドラマ「やじ×きた」主題歌のオファーがきっかけで生まれた楽曲。志磨さんご本人も少しだけ出演されていました。

不幸続きから抜け出すために厄落としのお伊勢参りや、気になるあの娘のお尻を追いかけながら日本を旅する2人だが、実はお伊勢参りも女の子も、なんだかんだ言いながら一緒にいると楽しい自分の相方と共に旅を続けたい口実でしかない。そんな2人のための、同性へ向けたラブソング

志磨さんも「なんかわかる気がする」とおっしゃられていた通り、一緒にバンドを組んで活動するバンドメンバーってそんな感じですよね。私も少しわかる気がします。

「クレイドル・ソング」

クレイドルソング=子守歌。

志磨さん曰く「ニューエラと対になる曲」だそうです。収録曲順的にも対ですね。

たしかに、ニューエラと歌っている内容はほぼ同じかと思いますが、こちらは”世界の終わり”をまだ全然受け入れられていないですね。

昨今の情報化社会では体験したことの無いことでも、あたかも体験したかのような情報が手に入り、なんでもわかった風に捉えてしまいがちですが、実際に”世界の終わり”を迎える直前はこの歌のような気持ちになってしまうかもしれませんね。

「ぼくはふいに泣いた しぬのは こわかったわ」

「人間とジャズ」

核戦争や天変地異のような突然の出来事で人類が滅亡するのではなく、このまま緩やかに衰退していった果てに世界が終わるとしたら…?」という、とてもシリアスでヘビーなテーマを扱う今作「ジャズ」のエンディングを飾る1曲。

ピアノを弾いているのは、ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さん。当初は宅録風なピアノで鼻歌を歌っている簡単なデモ音源だったが、奥野さんのピアノに興が乗ってくるとどんどんジャジィなアレンジになっていき、聞き惚れている最中に「あ、ジャズか!」と発想を得て、アルバムタイトルが決まるきっかけとなったそうです。

スタインウェイ製のピアノによる綺麗な録音を、割り切って徹底的に編集(エディット)したことにより、ほぼノイズのような音像となっている。ノイズが終末感を引き立てて、今作のエンディングにふさわしいサウンドかと思います。

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ドレスコーズにとっての「ジャズ」とは

以上、全12曲をご紹介してみました。

最後に、志磨さんはインタビューにて、

今回のアルバムは、今まで挑戦したことのない音楽であり、これまでのアルバムの中で一番シリアスなテーマかもしれない。とてもメランコリック(憂鬱な様、ふさぎ込んでいる様)で、悲しくて、でも美しいコンセプトのアルバムかもしれない

と語られています。

たしかに、取り扱っているテーマが“人類が滅びる時に遺すであろう最期の音楽”というとても重いテーマであるにも関わらず、アルバム全体を聴き終えた後には、どこか穏やかで暖かい気持ちにさせてくれる気がします。

こんなコンセプトのアルバムはなかなか無く、貴重な作品だと思いますので、ドレスコーズのファンではない方も是非チェックしてみてくださいね。

長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。おしまい。

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