Mr.Children「深海」全曲紹介 ~”問題作”とまで呼ばれた作品で描き切ったものとは?~

アルバム全曲紹介

こんばんは、まんじろう(@manjirooblog)です。

今日は、Mr.Children5枚目のアルバム「深海」を全曲ご紹介しようと思います。

発売当時、“ミスチルファンであり続けるための踏み絵”とまで言われた問題作で私達に伝えたかったことは一体何なのでしょうか? それでは、どうぞ!

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Mr.Children「深海」全曲紹介

「Dive」

今作「深海」は、曲ごとにトラックを区切らずにアルバム全曲を1トラックとしてリリースすることも考えた程の、アルバム1枚で1つのテーマを扱う”コンセプトアルバム”となっています。

オープニングを飾るのは曲名通り、海に潜る音、そして聴こえてくる音楽は…

「シーラカンス」

今作の実質的な1曲目であり、コンセプトアルバム「深海」を象徴する重要な楽曲

アコースティックな歌い出しから始まったのも束の間、歪んだディストーションギターから一気に深海の世界観に引き込まれていきます。数多くのミスチル作品の中でも「深海」の音はアナログ感にこだわって録音されているため、音がもう”異質”です。

シーラカンス 君はまだ深い海の底で静かに生きてるの?
シーラカンス 君はまだ七色に光る海を渡る夢見るの?

“シーラカンス”が何にあたるかは様々な解釈があると思いますが、私には“シーラカンス=生きる意味”のようなモノにあたる気がしました。

今作「深海」は、「(主人公にとっての)シーラカンスとは何か?」を描いている作品のように思えます。

「手紙」

アコギのアルペジオとピアノに乗せて歌われる、今はもう届かないラブソング

なぜ過ぎ去ってしまったのか?、なぜもう会えないのか?

その答えは後に収録されている楽曲達によって、少しずつ解き明かされていきます。

「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」

2人の”出会い”、そして”別れ”までをリアルに描き、男女問題の難しさを皮肉ったような歌。

“愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない”なんて流行歌の戦略か?
そんじゃ何信じりゃいい?”明日へ向かえ”なんていい気なもんだ
混乱した愛情故に友情に戻れない 男女問題はいつも面倒だ

いつの時代でも取り上げられる永遠のテーマ、“男と女”

そして、それは“人間”という生き物における最大のテーマでもあると思います。

「Mirror」

2人の”幸せだった頃”を歌う、今作で最も明るい”単純明快なLove Song”。

人前で泣いたことのない そんな強気なあなたでも
絶望の淵に立って迷う日もあるでしょう

言葉を選ばずに的確に表現するところや、滲み出る優しさがミスチルらしい1曲だと思います。

その全てが嘘っぱちに見えて 自分を見失う様なときは
あなたが誰で何の為に生きてるか その謎が早く解けるように
鏡となり 傍に立ち あなたを映し続けよう そう願う 今日この頃です

前曲で提示された“ありふれた男女問題”に対するアンサーソングであり、“恋人の在り方”に1つの答えを提示した大名曲だと思います。この歌大好きです。

「Making Songs」

桜井さんが楽曲を制作する数々のデモ音源が散りばめられた、マニアックなファン垂涎の音源。

聴いたことの無い曲達が次々に聞こえてきます。この先いつか「Mr.Children未発表音源集」とか出してくれませんかね…?賛否両論あるかもしれませんが、私は素直に聴いてみたいです。

そして、最後に聞こえてくる曲は…

「名もなき詩」

ドラマ「ピュア」の主題歌や、新垣結衣さん出演の「エリエール」CMソングにも採用された、紛れもなくMr.Childrenの代表曲でもある、10thシングル曲

歌詞の「ノータリン」が当時の放送禁止用語にあたるため、TVやラジオ等のメディア向けに該当部分を「言葉では足りん」と歌う別音源が存在するそうです。当時でも桜井さんは気にせず「ノータリン」と歌うことが多かったみたいですが…(笑)

あるがままの心で生きられぬ弱さを 誰かのせいにして過ごしてる
知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中で もがいてるなら 僕だってそうなんだ

「頑張れ!」「負けるな!」と励ます歌は数多くあっても、「僕だってそうなんだ」と寄り添うことで励ます歌はなかなか無いかと思います。ジョギング中に歌詞が浮かんできた桜井さんが「この曲を歌入れするまでは死ねない」とまで豪語するほどの大名曲。

愛はきっと奪うでも与えるでもなくて 気が付けばそこにある物

1番のサビのみならず、2番のサビまで頻繁に取り上げられるという異例の楽曲。桜井さん曰く「(ジョギング中で)頭が真っ白になっていたから、“愛の本質”のようなものを描けたと思う」と、この歌詞は桜井さんご本人もお気に入りとのことです。

ライブでもかなり頻繁に演奏されており、サビは歌えて当然かのようにマイクをフッて来られますので、その際はこの大名曲を全力で歌いあげましょう!!

「So Let’s Get Truth」

ミスチルの楽曲、というよりかは桜井さんソロでの弾き語りのような楽曲。

当時の社会(今もあまり変わっていませんが…)を傍観者目線で観察し、歌う社会風刺ソング。

子供らはたんこぶ作らず遊び 隣に習えの教養を 植え付けられて顔色を見て
利口なふり利口なふり利口なふりをするが やがて矛盾を知り苦悩したり試行錯誤する
So Let’s Get Truth・・・・・・

「So Let’s Get Truth」と「素通りしたりする」や「苦笑したりしてる」との韻や意味の掛け方が秀逸だと思います。

ここで歌われている“So Let’s Get Truth=真実を掴み取れ!”は後の楽曲に繋がっていくことになり、そして今作「深海」は、ここからさらに暗い雰囲気に包まれていきます…

「臨時ニュース」

曲名の通り、男性アナウンサーの”臨時ニュース”が聴ける音源。これは次曲への伏線となっており、収録されている音声は1995年にフランスが世界中の反対を押し切って核実験を行った内容のニュースとなっています。

ちなみに、チャンネルを切り替えまくっている中に一瞬だけ流れているのは「名もなき詩」のカップリング曲「また会えるかな」

「マシンガンをぶっ放せ」

前曲からチャンネルが切り替わったようにいきなり歌い出しがはじまる、ミスチル史上最も投げやりで過激な12thシングル曲

やがて来る”死の存在“に目を背け過ごすけど
残念ですが僕が生きている事に意味はない

見えない敵にマシンガンを ぶっ放せ Sister and Brother
正義も悪もない この時代を行進していく兵士です
殺人鬼も聖者も凡人も共存してくしか ないんですね
触らなくたって神は祟っちゃう 救いの唄は聞こえちゃこないさ

“言葉を選ばずに的確に表現するのがミスチルの魅力”と考えているのですが、その魅力がマイナス方向に全振りしたような歌詞を歌う、珍しく最後まで一切の救いが無い歌。

でも誰もこの歌詞を完全に否定はできない、紛れもない”真実“のように思えます。

この曲のアウトロにはヘリコプターの音が収録されており、また次曲に繋がっていきます。その行先とは…。

「ゆりかごのある丘から」

ミスチルのアマチュア時代から存在すると言われている、今作で最も演奏時間が長い楽曲。

今作「深海」で、なぜ2人が離れ離れになってしまったのか?という「手紙」の前日譚。

でも僕が戦場に行っているその間 君は大人になってしまっていて
あの約束を頼りに 生き延びて戻ったのに 君はもう違う誰かの腕の中 そして僕は一人

サビで歌われている歌詞に反して、非常に美しいメロディなのが泣けてきます…。

一度だけ君がくれた 手紙を読み返したら 気付けなかった寂しさが降ってきて
ごめんねとつぶやいても もうどうなる訳でもなく 切なさがギュッと胸をしめつける

この曲に関しては、“歌”というよりも”語り手”に近いほど具体的な状況や心境が歌われています

壮大なアウトロの最後に”シーラカンス”と呼び続けていることこそが、主人公にとって“シーラカンス=君”である証拠だと思います。この時点までは。

「虜」

田原様の極太ファズギターが聴ける、追い詰められ過ぎてブチ切れた主人公のやさぐれソング

金曜日に奴に会ってきたろう? 簡単に別れ切り出せたの?
どうだったんだ 把握していたい 最低な君を

暴言を吐きまくり、しまいには”天国”へ連れて行ってくれと懇願する歌

2010年に公開された自身のドキュメンタリー映画「Split The Difference」では、同じ事務所に所属していたSalyuと一緒に演奏されアウトロでの歌の掛け合いを再現されていました。

take me to Heaven give me your love yeah yeah yeah
take me to Heaven give me your love…

「花 -Memento Mori-」

当時はノンタイアップ、1曲入り500円で発売された11thシングル。

元々は女性アーティストへ提供する予定で制作されていたが、思っていたより出来が良く、いつも通りミスチルのレパートリーとなった楽曲。

サブタイトルの[mento-Mori]は、ラテン語で”死を思え、死を忘れるな”という意味だそうです。絶望の淵”からどん底に突き落とされた主人公が歌う、再生を願う歌

悲しみをまた優しさに変えながら 生きてく
負けないように 枯れないように 笑って咲くになろう
ふと自分に 迷うときは 風を集めて空に放つよ 今

シングルとして単体で聴くのと、アルバム「深海」収録曲としての流れで聴くのでは聴こえ方が変わってくる気がします。やはり「深海」を通じて聴く方が重みがあります。

後に、20thシングル「優しい歌」のカップリング曲として再アレンジ、再レコーディングされるくらいミスチルご本人にとっても重要な大名曲

「深海」

今作のラストを飾る、アルバムタイトルを冠する楽曲。

アルバム全体を通じて、前曲を”深海に沈んでいった過程”とするなら、この曲はまるで重荷を捨てきって、一気に海面へ浮上するような開放感や勢いが感じられる楽曲。アウトロ部分に水中を浮上していくような音も収録されています。

シーラカンス これから君は何処へ進化むんだい
Oh シーラカンス これから君は何処へ向かうんだい

もうこの時点では、主人公にとって”シーラカンス=君”では無くなっていることが明らかだと思います。「何処へ進化(すす)むんだい」や「連れてってくれないか 連れ戻してくれないか」と歌っているように、まだ”シーラカンス”が明確ではないものの、主人公の気持ちがとても前向きになっていることが伺えます。

なので、アルバム「深海」は“とある男が絶望のどん底に沈んでいく”だけではなく、“どん底から浮き上がってくるまで”を描いた作品だと思います。

そして、収録楽曲に”救い”が無い歌が多かった印象ですが、アルバム全体を通じて聴くと”希望”が確かに存在する、アルバム全曲で1つの作品という正にコンセプトアルバムに仕上がっていると思います。

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おわりに

以上、「深海」収録の14曲を全曲ご紹介してみました。

楽曲単位では無く、アルバムに収録されている全曲で1つの物語を描き切った、コンセプトアルバムの名に恥じない名盤だと思いますので是非チェックしてみてくださいね!

長文に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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